国内企業に勤めている人の海外赴任・駐在が決まった場合、今まで行っていた積立投資を継続できるのか心配になる方は多いでしょう。NISAやつみたてNISA、iDeCoなどの制度を活用して老後などの資金を準備している人も多いと思います。
しかしこれらの投資は、長期での資産形成を見据えた投資であるため海外赴任・駐在が決まったとしても「拠出を続けたい」「資産を手放したくない」と考える人は多いです。
証券会社に海外赴任・駐在の事実を申告せずに、海外在住や赴任をしようと考える方もいます。
そこで本記事では、海外駐在中に投資を継続する際の注意点について詳しく解説していきます。
目次
海外赴任・駐在中の積立はどうなるか
「貯蓄・年金だけでは」と老後への不安を抱えている人が多い中で、NISAやつみたてNISA・iDeCoといった、国が用意している投資制度を活用する人が増えています。しかし、海外赴任・駐在が決定した人の中には「海外に行ったら積立投資ができなくなるのでは?」と考えている人もいます。
海外赴任・駐在をすると、本当に積立投資ができなくなるのでしょうか。
一部制度では継続が可能ですが、多くは新規の拠出(買付)ができなくなるため、必要な手続きを行う必要があります。
海外赴任・駐在時の積立投資は手続きが必要?
投資を始める際には、証券会社等で口座を開きますが、国内で行う積立には、投資によって生じる売却益や配当金に課税がなされる課税口座での投資だけでなく、それらが非課税となる口座での投資もあります。
非課税口座であっても、「海外へ赴任すると課税されるようになるのでは?」と不安を感じている方もいるようです。
海外赴任・駐在により国内で行っている積立投資はどうなるか、課税・非課税別に解説していきます。
※各金融機関によって取り扱いが異なります。必ずご自身が契約している金融機関に確認を行いましょう。
課税口座で積立投資をしている場合
まずは課税口座で積立投資をしている場合について説明します。
課税口座(特定口座、一般口座等)で積立投資をしている人は、自分が決めたタイミング・金額で定期的に金融商品を購入しているでしょう。または、金融機関が提供する「投信積立サービス(指定した投資信託を、毎月一定金額、自動的に買い付けるサービス)」を利用している人もいると思います。
課税口座で積立投資をしている人が海外赴任・駐在した場合、口座にある資産(一部の投資対象商品)は保有できますが、新規の拠出(買付)はできなくなります。
海外赴任・駐在により口座を凍結させる場合も、海外の住民票や在留証明書、パスポートの写しなどを証券会社に提出する必要があります。
非課税口座で積立投資をしている場合
次に税制面で優遇が受けられる非課税口座で積立投資をしている場合ですが、こちらは制度ごとに異なります。以下4つの制度についてそれぞれ解説していきます。
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一般NISA
一般NISAとは、株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき、最大5年間(最大600万円まで)非課税で積立投資できる制度です。
海外赴任・駐在の場合は、出国前に所定の手続きを行うことで、口座の継続、一部の投資対象商品は最長5年間非課税で保有できます。ただし新しく投資したり、ロールオーバー(非課税期間の延長)はできなくなります。
また、滞在が長期化して、5年を超える場合は口座が継続できず解約となります。
必要な手続きとしては、証券会社に「非課税口座継続適用届出書」を提出する必要があります。書類を提出する際の手続き方法や提出期限は金融機関ごとに異なるため、それぞれの金融機関で提示されている出国時の手続き方法に従いましょう。
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つみたてNISA
つみたてNISAは最大20年という長期で、年間40万円まで非課税で積立投資ができる制度です。
一般NISAと同様に、出国前に証券会社ごとに定められた手続きを行うことで、最長5年は口座を継続できます。ただし投資対象商品の保有や、これまで積み立てていた資産の保有も出来ず売却となります。
口座を保有できる期間が非課税期間の20年ではない点にも注意しましょう。
一般NISA・つみたてNISAともに、帰国時には必ず届出を行う必要があります。
帰国届を提出することで再度国内での新規拠出が可能となります。仮に届出を行わないまま5年が経過してしまうと、口座が解約となってしまうため帰国後すぐに行った方がよいでしょう。
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ジュニアNISA
ジュニアNISAは未成年者が利用できる少額投資非課税制度であり、最大5年で年間80万円まで積立投資が可能な制度です。
ただし一般NISAやつみたてNISAとは異なり、ジュニアNISAは海外転勤すると口座は継続できず解約する必要があります。残存する資産は「払出し制限付き課税口座」に全額払い出しとなります。
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iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは運用益が非課税なだけでなく、拠出金は全額が所得控除の対象となり、所得税と住民税が軽減されます。
最高65歳まで加入が可能な個人年金制度です。
前述したNISAとは異なり、iDeCoは海外赴任・駐在時の勤務形態によって以下のように取扱が変わります。
- ・所属は国内企業のまま:そのまま掛金の拠出および運用が可能
- ・所属が海外企業になる:運用の継続は可能だが掛金の拠出は不可
海外赴任・駐在でも所属が国内企業から変わらない場合は、掛金の拠出も今までと変わらずに行えます。
所属が国内企業から海外企業になる場合、新たな積立はできなくなりますが「運用指示者」となる手続きを行うことで運用を継続することが可能です。
※以上の情報は2023年1月現在のものです。
貯蓄型の生命保険を契約している場合
少し視点を変え、貯蓄型の生命保険を契約している場合についても考えてみましょう。
貯蓄型と呼ばれる生命保険は、保険本来の保障だけでなく、毎月の保険料の一部を積み立てていくため貯蓄としても機能します。
一般的に解約時に解約返戻金、満期時に満期保険金を受け取ることができ、その際に戻ってくるのは貯蓄のために積み立てられ、運用されたお金となります。注意点は早期に解約すると元本割れする可能性があることです。
生命保険で積立投資をしている意識は薄いかもしれませんが、貯蓄型の生命保険も資産形成の一つです。
海外赴任・駐在が決まっても条件を満たすことで、現在契約している生命保険を継続することはできるため、安易に解約しないよう注意しましょう。
海外で積立を続ける場合の注意点
ここまで解説したように、NISAやiDeCoといった投資制度は、条件付きで一部の投資対象商品を保有することは可能ですが、次に挙げる3つの点に注意しましょう。
- ・海外赴任・駐在が長期の場合は口座を継続できない
- ・無申告は罰則の対象になる
- ・海外の企業に就職する場合は扱いが変わる
海外赴任・駐在が長期の場合は口座を継続できない
多くの証券会社では、海外赴任・駐在でも証券口座を継続できる条件に「出国日から5年以内に帰国予定であること」と定めています。
ただし5年を超える、または期間の定めのない場合は総合口座の継続はできません。
無申告は罰則の対象になる
海外赴任・駐在を申告せず手続きを行わないまま出国すると、取引の制限を受けたり口座が廃止されたりするなどの罰則対象となります。
例えば楽天証券では、故意に出国時の手続きを行わず後々非居住者であることが判明した場合、次の対応が取られます。
- ・特定口座、NISA、つみたてNISA:口座は廃止となり保有商品も売却される
- ・取引:全取引が制限される
- ・保有商品の扱い:証券会社の任意で売却される
- ・契約、設定状態:解約となる
- ・税制等:源泉徴収税額は還付されない
「1・2年海外に行くだけだから、ばれないだろう」と考える方もいるようです。
しかし無申告状態が判明すると口座が強制解約になり、資産も売却されるなどデメリットしかありません。
短期間であっても、海外赴任・駐在時は必ず確認をしましょう
海外の企業に就職する場合は扱いが変わる
iDeCoに関しては海外へ出国したかどうかよりも「雇用先がどこか」で扱いが変わります。
出国しても雇用元が国内企業であればそのまま掛金の拠出および運用は継続できますが、雇用元が海外企業に変わったにも関わらず申告しない場合は罰則の対象となるので注意しましょう。
まとめ
海外赴任・駐在の日程が決まったら、現在行っている積立方法ごとに継続可否を確認し必要な手続きを進めましょう。
短期間海外に赴任・駐在するだけだから良いだろうという気持ちを持っていると、罰則の対象になり資産が差し押さえになる可能性があります。積立の継続ができない場合でも、払い出しや売却等の手続きを必ず行いましょう。
海外赴任・駐在が決まると今まで意識していなかったことや疑問が多く出てきます。特に今後の将来を見据えて積み立てている資産の扱いは誰もが気になる部分です。
どうしたらいいのか分からない、自分だけでは不安な方は、一度お金の専門家に相談することをおすすめします。
IFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)であれば、お金にまつわる総合的なアドバイスを受けることが可能です。
GAIAはIFA業界の先駆者として、10年後を見据えた資産運用のトータルアドバイスを行っており、海外赴任前・駐在中・帰国後に合わせオーダーメイドのサービスを提供しています。
一人ひとりのライフプランに合わせ住宅ローンや生命保険など総合的なお金の相談が可能ですので、不安や疑問を抱え込まず、まずはGAIAに一度相談してみるのはいかがでしょうか。
【監修者】
GAIA株式会社
IFA事業部 資産形成課
GAIAについて
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駐在先での仕事に専念し、安心した生活を送るためにも、お金周りの整理をしておくことが大切です。
GAIAでは、海外赴任をされるお客様のご相談も多数承っております。
GAIAは「会社の利益よりお客様の利益を優先します」を信念とし、お客様の資産残高が増えることが自社の収益につながる透明性が高いフィーベースのビジネスモデルを実現しています。
お客様と同じ方向を向いて、お一人おひとりの資産運用の目的を明確にしながら長期的な資産運用を伴走いたします。
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