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長期投資を実行するのは難しい
投資というと、「なんとなく怖い」というイメージをお持ちの方も多いかと思います。投資、あるいは資産運用は、「資産所得倍増プラン」の名の下で岸田政権が国策として推し進めており、高校の授業でも取り扱われ始めるなど、急速に広がりを見せています。この大波に乗るため、銀行や証券会社を始めとした金融機関が動き始めています。
投資をおすすめされる際にセットで必ず言われるのが「長期投資をしましょう」という言葉です。長期投資というのは、文字通り、長い期間にわたって投資をし続けるという意味で、大抵は、5年~10年といった期間を指すことが多いようです。銀行や証券会社の窓口で相談された方は、「長期間、株や債券と呼ばれる金融資産に投資をし続ければ、お金が増える可能性が高い」といった話をお聞きになった方も多いのではないでしょうか。
しかし、この長期投資、実行するのがとても難しいことが知られています※。長期投資の有効性自体は、何十年も前から知られているにもかかわらず、です。ほとんどの人が、途中で怖くて売ってしまうのです。
※「Handbook of the Economics of Finance, Volume 2, Part B, 2013, Pages 1533-1570」より
本稿では、投資の何が怖いのかを明らかにした上で、「長期投資」で失敗しないためにどのように恐怖と付き合っていくのが大切なのかを紹介していきます。以下、長期投資といった場合には、インデックス投資や投資信託のような分散されたものへの投資を指し、個別企業の株ではないものとします。イメージとしては、少なくとも100社以上の株に広く投資しているような状態です。
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投資は怖い?
投資の代名詞でもあるのが、株式です。簡単に、株、とも呼ばれます。これまでに投資経験がない方や、途中で投資をギブアップした経験のある方は、株はギャンブルという印象が少なからずあるかもしれません。テレビを見ていると株が暴落したというニュースを見ることもあります(最近は結構多く目にするかもしれません)し、両親や祖父母から株や投資の話を聞いて嫌いになった方もいるでしょう。
実際に株がギャンブルに属するかどうかは別として、少なくとも、株には「何年かに一度、大きく価格が暴落する」という性質があります。残念ながら、これは運が悪いから下がるといったものではなく、性質と言ってもいいもので、株のリターンは、この暴落の恐怖に耐え続けることに対する報酬であることが学術的な研究で示されています。
株価が下落する2つの理由
株の価格が下落する理由は様々ですが、一般に大きく2種類に分けられます。
1.特定の会社が経営不振になったり、不祥事を起こすなど、その企業に特有の理由によって株価が下がるケース
これは、「信用リスク」と呼ばれています。この信用リスクは複数の会社の株に同時に投資する(分散投資と呼ばれます)ことで、影響を抑制することができます。分散投資のイメージですが、1万円を1円ずつ1万社に同時に投資していれば、その中の1社が不祥事で倒産したとしても、1円の損失にしかならない、といった感じです。
2.何らかの理由によって経済全体が弱ってしまい、特定の会社の状況に関わらず株の価格が下落してしまうケース
このリスクは「市場リスク」と呼ばれています。経済の循環はよく血液の循環に例えられ、住宅ローンの借金を返せなくなった人が大量に現れたり、コロナウイルスの感染拡大でヒトやモノの移動が制限されたりなどの理由で、経済も血の循環が滞ると弱ってしまいます。株の価格というのは、企業にどれだけの価値があるかではなく、その株を売りたい人と買いたい人が売買した直近の価格で決定されます。通常、株価は企業の価値をほぼ正確に表していると言われていますが、経済全体が弱ってしまい、そのことに驚いた誰かが大量に株を売却すると、他の投資家も釣られて売却に走り、買い手がいなくなって、やがては株価が暴落する、といったことが発生します。
株価の暴落は市場の自浄作用
株価の下落がさらなる下落を呼ぶメカニズムにも理由があります。それは、数百億円という規模の大金を動かすプロの投資家も、大抵はどこかの金融機関に属している会社員であり、決算が来る前に顧客の損失(そして自分への責任問題)をこれ以上拡大させないよう途中で売ってしまう、という行動をとりがちです。個人投資家だけでなく、世界中のプロ投資家にとっても、急落は耐え難いものなのです。
株価の暴落は、世界中の投資家を悲観の底に引きずり込む極めて残酷な現象ですが、これは、ある種、資本市場の清浄化に伴う現象でもあります。恐怖に耐えられない投資家や、経済に対して十分な付加価値を生み出せない弱い企業を経済から追い出すことで、何があっても投資し続けられる強い投資家と、真に顧客に必要とされている企業だけが残り、市場が綺麗になっていく現象が発生します。また、穴だらけになった市場には新たな参入が起き、20年前のGoogleのような、強い投資家に支えられた新進気鋭の企業は、やがて次の世代を代表する企業になっていきます。この市場の自浄作用は、いつ起きるかは分からないけれども、数年から十数年に一度発生することが知られています。
長期投資の果実は、リスクを取り続けた先にある
実は、このいつ暴落するか分からないという状況で、リスクを取り続けることに対して支払われる報酬が、株の長期投資のリターンであるということが学術的に明らかになっています。言い換えると、企業は、何年かに一度暴落した際に発生する損失以上のリターンを、投資家に還元しなければならず、それができない企業は市場から退出しなければならない、ということです。リターンの還元は、業績アップを通じて、配当、あるいは株価の上昇といった形で行われます。
「暴落する前に売れば良いのでは?」と思われるかもしれませんが、そのタイミングを取ることは不可能だと言われています。株は世界中の無数の投資家が各々の判断基準にしたがって売買を行っているので、誰かの考えの裏を読んでタイミングをとることは、よほどの天才的な頭脳を持つ人にしかできないでしょうし、そういった人でも何十年もタイミングを読み切り続けるのは困難でしょう。
恐怖との向き合い方
ここから株価下落の恐怖との向き合い方についてご紹介します。
暴落のリスクを取り続けることが株の長期投資のリターンを裏付けている以上、投資家は、日々の価格変動や、株価が暴落する恐怖に耐え続けなければなりません。長期的には株のリターンは損失を遥かに上回ると頭で分かっていても、実際に直面するとストレスが溜まり、逃げ出したくなるものです。金曜日に暴落した際などは、土曜日と日曜日を過ごす間、ずっと頭から離れません。平日の仕事中に暴落した際などはもってのほかです。
株価の下落と付き合うには、大きく分けて2つの方法があります。
1.短期的な株価の変動を完全に無視して放置する
これができるのであれば、最初から苦労は要りません。
2.いま世界や金融市場で何が起きているのかを知ることで、自分が感じている恐怖の正体を明らかにし、その上で、世界経済の頑強さを信じる
株式は今日の世界経済の根底を支えるシステムであり、そのシステムが崩壊しない限り、資本市場の自浄作用が働くことが期待されます。株式というシステムが崩壊する状況というのは、企業が株での資金調達を必要としていないようなある意味で非常に素晴らしい世界か、もしくは、もうお金自体が必要とされていない荒廃した世界でしょうから、そのような際には、おそらく、お金よりも別のことを心配すべきでしょう。何が起きているかを自分で調べることはおすすめしません。なぜなら、自分で調べようとすると、悪いニュースばかりが目に付き、どんどん気分が悪くなっていき、投資を止めたくなってしまうからです。投資に慣れていない場合は、「歴史的大暴落」、「✕✕年ぶりの下落」といった刺激的な記事ばかりが出てきて、納得できる結論に辿り着くのさえ困難でしょう。プロの投資家も例外ではなく、気分を悪くしながら調査を行い、重い気分のまま売却する株を選び、胃を痛めながら売却を行っていきます。プロの投資家の場合は、責任者として孤独の戦いを強いられますが、個人投資家の場合は、信頼できる情報源を持ち、株価が下がった際に相談できる相手を作ることで、冷静さを保つことができます。
市場動向について相談できる相手を持つことは、下落のストレスを溜めないために極めて重要です。市場の下落はある意味でホラー体験のようなものですが、正体が分からないから怖いのであって、ホラー映画を見ている最中に「これの正体は○○ですよ」とか「過去の統計から見ると、次のシーンで右から出てくる可能性が高いですよ」など隣で逐一アドバイスをくれる人がいれば、ホラー映画の怖さも緩和されるでしょう。
足元から目線を少し上げてみる
株価が下落した際の気の持ち方として大切なことは、すべての会社の本源的な価値が下がっているわけではない、ということです。暴落時はあらゆる企業の株が投げ売りされ、自身が保有している株の価値も減っているように見えますが、それはあくまでも直近に誰かと誰かが売買した価格であり、企業本来の価値とは異なるということを実感することが大切です。
株価が暴落した日に少し家の外に出てみると、意外と世の中は変わっていないことがわかるかと思います。近所のスーパーはいつものように営業しているでしょうし、いつも混んでいるコーヒーショップはその日も混んでいるに違いありません。それらのお店も株を発行している株式会社のはずですが、いつもと何も変わったところは見られず、今日も人々に必要とされており、そのお店の本源的な価値自体は毀損していないことが感じられるのではないでしょうか。
インデックス投資など、投資先が広く分散された形で投資を行っているのであれば、世の中で必要とされている企業の株への投資額が多めになっていて、逆に、あまり必要とされていない企業の株への投資額は少なめになっていると考えて良いですから、株価が戻り、落ちる前の水準を超えて上昇していくのも時間の問題だと考えて良いでしょう。含み損は、必ずしも損失では無いのです。
長期投資の力を信じて
株は16世紀頃にイギリスで生まれたと言われていますが、以降400年間、消滅せずに投資の第一線で存在し続けられたのは、投資家にリターンを返し続けることができたからにほかなりません。
世界経済を牽引する米国では、1900年以降、24回もの景気後退に襲われています。単純に考えると、5年に1回という恐ろしい頻度です。にもかかわらず、株価は、1900年から今日までに200倍という驚異的な成長を遂げて来ました。
2022年上半期も株式市場は大幅な下落に見舞われていますが、株式というシステムそのものが崩壊するほどの極端な現象は起こっていませんので、株が損失以上のリターンを還元してくれる日を、じっくり待っていただければと思います。
執筆者:GAIA 運用企画部
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