かつて証券取引所の立会場で、手でサインを使って売買注文を伝える証券マンのことを「場立ち」と呼んでいました。時代が進み、インターネット取引に移行した現在ではもはや見られない光景です。本稿では、その場立ちがどのようにして生まれ、消えていったのかを振り返ります。あの独特の手サインにはどのような意味があるのでしょうか。
場立ちとは何か
今でこそ経済ニュースで株価の動向を伝えるときは、東証アローズの株価電光掲示板が背景に使われますが、かつては東京証券取引所の立会場の風景が映し出されていました。その中で忙しくサインを出していたのが「場立ち」と呼ばれる証券マンです。
場立ちの役割は、立会場にある証券会社のブースから出る売買内容を表す「手サイン」を同じ動作で確認し、ポストごとに分かれている才取会員(売買を成立させる人)がいるブースに注文を伝えることです。いわば顧客の売買注文を証券取引所の売買担当に伝える仲介人のようなものです。
場立ちの歴史
場立ちの歴史は古く、江戸時代の享保15(1730)年に幕府から米切手を売買する現物市場と、米の代表的な銘柄を帳面上で売買する先物取引が認められ、大阪に「堂島米会所」が開かれた時に遡ります。
その市場ではすでに「手振り」と呼ばれるサインで場立ちが売買していたのでした。つまり、最初の場立ちは株式ではなくお米だったわけです。
その後、明治11(1878)年6月1日に日本で初めての証券取引所である「東京株式取引所」が誕生し、売買の立会が開始されましたので、その日が証券取引所における場立ちのはじまりと定義することができます。
その後約120年の長きにわたって、場立ちが株式取引の仲介役として株式市場の発展に貢献しました。
そして、東京証券取引所の建て替え計画に伴い、平成11(1999)年4月30日の立会を最後にその歴史に幕を下ろし、翌2,000年に東証アローズが竣工して現在に至ります。
場立ちのサインの意味は?
場立ちのサインは、手話のように手の動きで売買注文の内容を表します。サインで表す内容は「どの銘柄を、何円で何株買う(または売る)か」です。
まず銘柄を表すサインですが、たとえばトヨタ自動車の場合は片手でカタカナの「ト」を書き、そのあとに両手でハンドルを握る仕草をします。また、NTTは片手を耳にあてて電話で話す仕草、キャノンはカメラのシャッターを押す仕草をするといった具合です。
次に注文する株価と株数ですが、数字は指を使って表します。スタンダードな部分とひねった部分があるので慣れるまで証券マンも難しかったことでしょう。
たとえば、「3」は単純に中の三本を出すのではなく、外側の3本を使ってOKの形を作ります。数字はすべて片手で表すため、「6」は親指のみを出し、「9」は人差し指に親指を下からあてて9の形を作るといった具合にやや複雑です。
そして間違えると大変な「買い」と「売り」の区別ですが、買いは相手に手の甲側を向け、売りは手の平側を向けます。株数単位別の買いと売りのサインは次のようになります(サインは右手で出す)。
・500株の買い……パーを手の甲を外側に向けて押し出し、手前に引く
・500株の売り……パーを手の平を外側に向けて出し、手前に押し出す
・5,000株の買い……パーを手の甲を外側に向けて右へ押し出し、横から手前に引く
・5,000株の売り……パーを手の平を外側に向けて出し、手前から右横へ押し出す
・5万株の買い……パーを手の甲を外側に向けて押し出し、パーを顔へ引いて握る
・5万株の売り……パーを手の平を外側に向けて押し出し、そのまま握る
懐かしい場立ちの風景ですが、株価を黒板にチョークで書いていた時代から、手入力の電光掲示板に移り、今ではコンピュータ管理で瞬時に変わる株価表示になりました。
便利な時代ではありますが、先人たちの努力があってこそ、今の株式市場の発展があったことを忘れてはならないでしょう。
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